9/9北海道の地震で奮闘 「セイコーマート」/休まずに営業 安心届ける/車から電気◆ガス釜で米炊きおにぎり/温かい食事 住民「助かる」/配送センターは自家発電◆従業員も使命感/04年台風被害教訓に災害対応整備【東京新聞・特報】

北海道の地震で奮闘 「セイコーマート」

 休まずに営業 安心届ける

  車から電気◆ガス釜で米炊きおにぎり

2018年9月9日【東京新聞・こちら特報部】

北海道を襲った最大震度7の地震の後、大規模停電などで大手コンビニチェーンの多くの店舗が休業を余儀なくされる中、地元の「セコマ」(本社・札幌市)が運営する「セイコーマート」が奮闘している。道内千百店舗のほとんどが店を開け続け、調理コーナーで温かい食料も提供。「神対応」「北海道の誇り」といった称賛の声が寄せられている。セイコーマートとはどんなコンビニなのか。今回の地震で強みを見せた理由とは。 (片山夏子、中山岳、榊原崇仁)

札幌市中央区の本社ビル下にある「セイコーマート南9条店」。震災後、近隣のコンビニやスーパーの各店舗が停電で店を閉める中、自動車から引いた電源でレジと、商品を清算できる小型端末機を作動させ、店を開け続けた。

八日昼、同店で豚井を買った同市中央区の本間有未子さん(三八)はネットでセイコーマートが営業していると知った。「地震の日はお菓子しかなかった。子どももおり、今回はお弁当があって本当に助かる。お肉なんて久しぶり。店を営業し続けてくれている従業員の方々に感謝です」

地震後、物流が滞り、パンやお弁当が手に入らない。そんな中、大活躍したのが店内調理コーナー「ホットシエフ」だ。ガス釜のある店舗では、地震直後から米を炊き、手作りのおにぎりを提供。その後、各店舗ごとに本来のメニューを徐々に再開させた。停電から回復した今、南9条店では作り立ての豚井、カツ井、フライドチキンが棚に並ぶそばから売れていく。同市豊平区の店を利用した三角則子さん(八一)は「温かい食事ができて本当に助かった」。南区の店を使った大学二年の霜田孝太郎さん(一九)は「家にあった冷凍食品を食べたら何もなし。おにぎりも出してくれて助かった。車で電源引いて店を開くなんて、セコマすげーって思った」。会社員奥田康博さん(四八)は「停電して街が暗い中でも店を開いて『どうぞ』と言ってくれた。どれだけ助かったか」と絶賛する。

函館市でも、突然の大停電に直面した人々の不安を物心ともに支えたのがセイコーマートだった。

函館新川店は市内全域が停電の中、六日は通常通り午前六時に開店。幸い、商品棚は崩れず、同店チーフの佐々木理恵さん(四一)はオーナーと相談して店を開いた。「地域密着型の店なので、自分がお客だったら、こんな時こそ開いていてほしいから」と振り返る。

開店と同時に客が押しかけ、パンやおにぎりはあっという間に売り切れに。暗くなる午後四時半まで、営業を続けた。

同店近くに住む主婦佐藤洋子さん(六七)は「地震後もあちこちでセイコーマートが開いていて、本当に助かっている」と話す。六日朝は同店で牛乳二本と食パン一斤を購入。翌七日夕方は停電で夕食が作れなかったが、セイコーマートの別店舗で、揚げたての豚カツ三枚や唐揚げを買うことができ、家族五人で温かい食事を食べられたという。

「開店前から駐車場はいっぱいで、お客が入り口前に集まっていた」と地震当日を振り返るのは函館石川店の店長・鈴木亜希子さん(四四)。午前八時に開店すると、通常の二倍近い八百人ほどが押し寄せたという。店近くに住む大坂純一さん(四八)は同日朝、非常食用に飲み物やカップ麺を買ったといい、「地震の日もいつも通り開いているのを見て安心した」と感謝した。

温かい食事 住民「助かる」

  配送センターは自家発電◆従業員も使命感

    04年台風被害教訓に災害対応整備

セイコーマートは茨城県に八十五店、埼玉県に十店(八月末現在)あるが、軸足は完全に北海道に置く。札幌市内に一号店ができたのは一九七一年で「日本にあるコンビニの中で店も早い誕生」とPRする。現在の道内店舗数でも他社をしのぎ、全道停電という事態にも、被害が大きかった厚真町、安平町、むかわ町以外の店舗約千五十店舗が営業を続けた。どうしてこんなことができたのか。

セイコーマートを運営するセコマの佐々木威知広報室部長はニOO四年、道内で猛威を振るい、広範囲で停電が発生した台風18号が契機だったと振り返る。

「店を開いたがバッテリーが無くなるとレジが使えなくなった。計算機でやるにも商品の値段が分からない。それをきっかけに災害対応を整えた」と説明する。 全店に「非常用電源セット」として、車から電源が取れるケーブルとレジの手元を照らせる発光ダイオード(LED)ライトとマニュアルを配布していた。地震後、ツイッターにも、社員や従業員の車から電源を取る店舗の様子が数多く投稿された。

被災者に温かい食べ物を提供したホットシエフは既に九百五十四店で導入済み。こうした取り組みは一九九四年から始めている。

東日本大震災時は、茨城県内の店舗が被災。その時は群馬から水を運び、店で米を飲いておにぎりを出した。「当時の経験があったので、ガス釜の店が結構ある。今回も地震直後はたくさんの人に行き渡るようにと、他のメニューは作らず、短時間で多く作れるおにぎりを提供し続けた」

物流にも強みがあった。今回の地震で、札幌配送センターは停電と商品崩れで一時配送が滞ったが、釧路配送センターは100%自家発電で継続的に稼働。同センターが備蓄する一カ月分の軽油の一部を札幌に回し、商品を配送した。

釧路配送センターは、東日本大震災後に見直された津波マップに基づき、一六年に高台に移転。その時、自家発電を設置したのも、災害に備えるためだ。「災害時にコンビニが物資供給の拠点になるといって、何とか店を開けたとしても物流が無ければ、物を提供できない」(佐々木部長)との思いが、今回の地震でずばり当たった格好だ。

さらに、店を開くには従業員が欠かせない。南9条店は二十四時間営業。相原聖子店長は地震当時自宅にいたが、倒れた食器棚の割れたガラスを処理し、二時間後には店に来たという。「困る人がいるだろうから、店を開け続け、できることをしようと思った」と話す。佐々木部長は「『家族を優先して』と言ったが、社員も従業員もパートの人もみな使命感を持ち、当たり前のように駆け付けてくれた」と感慨探げに話す。むろん停電中も開店していたコンビニはセイコーマートだけではない。だが、これほど道民が信頼を寄せていることについて、コンビニ研究家の田矢信二さんは「北海道とともに成長し、『おいしく』『安く』を実現してきたのがセイコーマート。もともと道民に愛されてきたので、皆さんが『まず行ってみよう』と思ったのでは」とみる。あまり報じられていないが、コンビニ事業以外でも底力を見せた。セコマは災害発生時の協力支援協定を北海道のほか、札幌市や紋別市など計十七市町村、陸上自衛隊北部方面隊、北海道電力などと締結しており、今回の地震後も北海道、札幌市や厚真町など八市町などに水、パン、おにぎり、カップ麺などを提供。自衛隊が厚真町でしている炊き出し用に必要なみそなど食材も用意した。

ネットでは多数の称賛が寄せられているが、佐々木部長はこう言い切る. 「普段われわれは道民に支えられている。地元のわれわれが一番この地に愛を持って、できることをやるのは当たり前のこと。特別なことはしていない」

((デスクメモ))
自宅の近隣にコンビニは八軒あるが、東日本大震災の時は、どの店も食料品が不足した。大規模停電が起きたら、確実により深刻な状態に陥る。そもそも災害時、コンビニ頼りではまずい。道民がセイコーマートに何を求めたのかを知り、どんな備えが必要なのか、ヒントにしたい。(典) 2018・9・9

セイコーマート南9条店=8日、札幌市中央区で

停電時の営業に使った車から電源を取る機器など

店舗内で調理した商品を提供する「ホットシェフ」=8日、札幌市中央区で

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カテゴリー: 経済, 地震, 中日東京新聞・特報 パーマリンク